永塚工業 沿革

王冠印研磨布紙
永塚工業株式会社
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研磨布紙と弊社の沿革

 物を磨くことは、人間の本能であるといわれております。考古学では、石器時代、石斧を研ぐのに砂岩を用いていたであろうと言われておりますが、それは、新井白石の「本朝軍記考」の中に神武天皇が即位前三年大和へ入られた時、熊野の住人高倉下が神剣を献上したと記されていることからもわかります。
 十二世紀の頃、中国で鮫の皮を乾燥して物を磨いたと伝えられ、又、樹液で貝の粉を羊の皮に付けて使ったといわれています。少し遅れて、スイスでガラスの粉を羊の皮に付けて物を磨いたと言われていますが、明和六年、江戸時代中期にギリシャのナキサス島のエメリー岬から取った石を紙に付けて売り出したのが、世界最初の研磨紙であると言われています。これは、今尚ナキサスエメリーとして使用されている研磨材でエメリーの名称は、この地名から取ったものです。

1825年(文政8年) 江戸時代後期には、欧米方面に於いて、手作りで硅砂、ガラス粉を使った研磨紙をかなり製造するようになりました。
1850年(嘉永3年) 米国でドイツ系の一移民少年ハーマンベアが美しい帽子を着た人の姿を見て、帽子の仕上げ用の研磨紙を貧困に打ち勝って独力で作り出しました。これが世界三大メーカーの一つベアマニング社の始まりであります。
1875年(明治8年) ガーネットの優秀性が発見され、それまでの硅砂、ガラス粉に取って代わるようになりました。
1891年(明治24年) 米国で34歳の天才、アチソン博士により炭化珪素が作られ、カーボランダム社の手で売り出され、1897年(明治30年)米国でヤコブが酸化アルミニウムを作ってノルトン社より売り出されました。

これが世界各国で製造されるようになり、天然産研磨材に代わって人造研磨材が市場の過半数を占めるようになり現在に至っております。
1890年(明治23年) 研磨紙がわが国に輸入されるようになり、当時の商工業の中心地であった大阪で、研磨紙の利用価値に着目し製法が研究され始めました。当社、初代社長永塚熊吉もその一人でありました。

研磨紙の台紙には当時問屋で大量に使用された手漉き和紙を綴じた大福帳の反古紙を明礬水に浸け強い紙を得ることができました。接着剤には、河内の八尾方面で古くから製造されていた和膠を使用しました。研磨材には大和二上山近辺に採れる金剛砂(ガーネット)を使用しました。

金剛砂は、万葉の昔より二上山、竹田川流域で採れ土豪の敷砂に使用されるくらいでありましたが、明治中期以後研磨材として本格的に採掘をされるようになりました。二上村誌に依ると天保10年幕末の頃、貧乏人を集めて採掘したので貧乏砂と言われ20打(2トン)で銀260匁で買い上げたということが記されており、これが最初の採掘と言われております。
1886年(明治19年)3月 初めて採掘届が出され20年頃河内の仲買人を通じ販売されるようになりました。そして大正5年に組合が発足したと記されています。
当時の埋蔵量は、竹田川136,000トン、新在家47,000トン、牡丹洞6,000トン、飛鳥川162,000トンで近い将来掘り尽くされるのではないかと言われています。
1892年(明治25年) 研磨紙製造法の技術に確信を得た初代社長は、当地に創業し、今日に至っております。創業当時は、家内工業の域を出ませんでしたが、1904年、日露戦争が起こり、急に需要が伸び、工員20名程で生産の増加を計り国内一の生産を見るに至りました。
1914年(大正3年) 第一次世界大戦の勃発により、鉄鋼の使用が著しく拡大され昼夜兼行して生産の増加に努め工員も最高100名を数えました。
1918年(大正7年) 機械による製造の試作にかかり、大正10年国内第一号の研磨布紙製造機が完成し飛躍的に生産が増加しました。昭和に入って、関東地方で研磨布の製造が始まり、昭和10年頃より第二次世界大戦に突入する前後にベルト研磨機が出来、使用範囲が拡大されました。

戦中、戦後の空白時代を過ぎ、昭和25年頃よりベルト研磨機、その他研磨技術が急に進歩発展し、人造研磨材、合成樹脂接着剤、および製造方法もこれに伴って高度の品質技術を要求されるようになり、現在では研磨布紙は精密切削工具として広範囲に認識されるようになりました。

当社におきましても三代社長永塚義一が再三欧米の現況を視察、把握し、設備の近代化と技術の向上に日夜鋭意研鑚を重ね世界のトップレベルに肩を並べるに至ったのであります。
初代会長 森田一雄 記
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